はじまりの場所

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「先生…私、行きたい所が分かった…」   下を向き、涙をそっと指で拭いた。     「…いいよ。どこでも。どこに行きたいの?」   先生は視線を私に移し、優しく微笑んだ。     「先生…あの港に連れていって。二人のはじまりの場所に…」     「二人のはじまりの場所…名港トリトン。よしっ、じゃあ名古屋港までドライブだ」   私に向けていた柔らかな視線を前方へ戻し、ハンドルを握る手に力を入れた。       二人のはじまりの場所…     あの夜、二人がはじめて結ばれた夜…     二人肩を寄せ合い、海に散りばめられた宝石達を眺めた場所。     初めて口づけを交わした、あの名港トリトン…。       私はどうしてもあの景色が見たかった。   また… 先生と二人で―――。       二人を乗せた車は港に向かい走り出した。   あの頃とは違う―――   新たな答えを見つけるために。
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