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港までの道のり。
「この曲って、先生のバイト先で電話してた時にお薦めしてくれた曲だよね!
実は次の日の朝イチでこのCD買いに走ったんだよ」
「この曲は唯が準夜の後にこっそり渡してくれた曲だよな」
私達は思い出の曲を聴きながら、その当時の状況を思い出していた。
想いを伝えられないもどかしさ。
側にいられた頃の喜び、幸福感。
その幸せと背中合わせの、罪悪感と切なさ。
別れの決意。
身が裂けるほどの苦しみ。
そして、見守り続ける想い…求め続ける想い…。
今までの思いが走馬灯の様に駆け巡る。
こうして二人で過ごす事など、もう二度とないと思っていた。
こうしている事も、裏切りなのかな…
―――――裏切りだよね。直人…
窓から見える街の灯りを眺め、狂おしい程に熱く高鳴る胸の鼓動と、握り締められる様な胸の痛み。
一度に襲いかかる感情で息が詰まりそうになる…。
「唯、もうすぐ橋だよ」
縛られた感情から私を解放する様に、先生が声をかけた。
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