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「少し車止めようか」
「え?…でも、車止めちゃいけないって書いてあるけど…」
窓から手を離し振り返った。
「大丈夫だって、少しくらい。車の通りだって少ないし。それにほら、他に止めてる人いるしね」
先生は、疎らに止まる数台の車を指差した。
「先生がそう言うなら。私も嬉しいけど」
「じゃあ決まり!俺も実は煙草が吸いたくってさ」
そう言うと、先生は工場が綺麗に見える位置の路肩に車を止めた。
「煙草吸っていいかな?」
先生は煙草を取り出し「ごめんね」と私に言った。
「うん。いいよ。先生ずっと運転して疲れたよね」
私の我儘でここまで連れてきて貰った事に、今更ながらに申し訳なく思えた。
「そんなの気にしなくていいよ。俺ももう一度、いつか唯と来れる日が来たらな…とか思ってたりなんかして」
先生は窓を開け、照れくさそうに煙草に火をつけた。
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