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どれくらいの沈黙が流れただろう―――
嗚咽する私の体を、そっと先生は引き離した。
私の乱れた前髪を直し、長い指が優しく頬を撫でる。
そして先生は深呼吸をした後、ゆっくりと口を開いた。
「唯…このまま二人で全て壊しちゃおうか」
「え……壊す…って?」
先生の胸に手を当てたまま顔を上げる。
掛けられた言葉の意味が分からず、真っ赤になった目できょとんとして先生を見つめた。
「さっき、唯が言ったろ?連れ去って欲しいって。自分の心に嘘をつく…それがきっと、一番の過ちなんだ…」
そう言って、先生は再び私を抱き寄せた。
強く抱きしめられて、私は彼の首筋に顔を埋めた。
懐かしい…先生の香り。
「唯…」
先生の手が私の頬に触れる。
そして、額に触れる先生の唇。
鼻と鼻が擦れ合った時、引き寄せられるように唇を重ねていた。
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