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普段の飲み会でも同じだが、パーティーも半ばに入ると、酔ってフラフラと席をハシゴする人達の椅子がちらほら空いてくる。
私と綾子はその隙を狙って、一番後ろの静かな席に腰を下ろした。
「ねぇ、直人は今何してるの?」
綾子は、調達したフルーツとケーキを乗せたお皿をテーブルの上に置いた。
「直人?今日は慎ちゃんの店に飲みに行ってる。たぶん、いつもみたいに朝までコースなんじゃない?」
私は大好きな桃を狙ってフォークを突き刺した。
「直人は朝までコース、そして先生の奥さんは韓国。ヤバイくらいに…こりゃヤバヤバだわ…」
綾子は独り言を呟きながら、ケーキの苺を指で摘まんでポンと口に入れた。
「何がヤバヤバなのよ。ねぇ、綾子。あんた何か企んでない?」
私は眉を寄せ、綾子の横顔をマジマジと見つめる。
「やだぁ~。そんな恐い目で私を見つめないでっ」
「綾子、絶対におかしいよ。あんたが何か企んでる時は、そうやっていつも茶化すんだから」
私は頬を膨らませ、横で嬉しそうに苺を頬張る親友を見つめた。
「企むだなんて、何か私が悪いことするみたいに言わないでよぉ。…確かに、ちょっと唯には悪いことしたかも知れないけど…」
「した!?今、「した」って言ったよね?ちょっと、何したの?」
私は目を見開き高い声を上げて、綾子のフォークを持つ手の動きを遮った。
「今は言えない…私からは。きっと、もうすぐ分かるから。もう…唯は一人で悩むには限界が来てる。結果はどうあれ、あんたは支えてもらうべき状況に来てるんだ…」
綾子は慎重な声でそう言って、私の目を真っ直ぐ見つめ返した。
「綾子…何言ってるの…?」
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