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「あっ!唯、見てっ。先生が、群がる雌達に襲われそう!」
私の問いから逃げる様に、綾子が突然前方を指さし叫んだ。
「はっ?!雌達に襲われる?」
また誤魔化された!?と思いながらも、まんまとその大きな声につられて、急かされる思いで綾子の指の示す方向に視線を向けた。
視線の先には2、3人の後輩達に囲まれた水島先生がいる。
「なんだ~。雌達って、消化器病棟の2年目の子達じゃんか」
「なんだ~じゃない!きっとあの子達、『水島先生~格好いいですぅ~』とか何とかピンクい声を出して、あの生真面目クンを若さで誘惑してるに違いない!」
「綾子、なに怒ってんの?若さへのひがみか?」
「うん。ひがみ。年々若さが憎らしくなるから」
綾子はヘラヘラと笑いながら席を立った。
「…どこ行くの?」
瞬きをして綾子を見上げる。
「どこって、煩い雌を追い払いに!さぁ、唯も行くよ。先生を奪い取れ!」
綾子はフンと鼻を鳴らし力強く言って、私の持つグラスを奪いテーブルに置いた。
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