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「ほ~らねっ。追っ払ったでしょ~」
綾子が得意気に言う。
「え?追っ払うって?」
「あ、いいのいいの。綾子の言うことは気にしないで」
「ちょっと~綾子の事は気にしないでって何だよ!…あっ、ねぇねぇ先生。この後に私達を家まで送ってくれない?今日は唯うちに泊まるんだ。帰りに二人でタクシーで帰るつもりだったけど、先生も同じ方向でしょ?三人で仲良く帰ろうよ」
綾子は両手を合わせ、お願いポーズで腰をくねらせる。
「うん、勿論いいよ。美しいお姉様達を責任持ってお送り致します」
先生は笑いながら、綾子のおふざけな態度に付き合って「かしこまりました」と、会釈をして見せた。
「唯っ、やったね。帰りも先生と一緒だよ」
綾子が先生には聞こえないような小さな声で、さり気無く耳打ちした。
「うん…ありがとう」
はにかんだ笑みを浮かべ頷く私。
ひゃ~、マジ嬉しいっ!
久しぶりに先生の車に乗れるんだぁ~。
あからさまにニヤケてしまいそうになる気持ちを抑える為、目線を足元に移し、綾子が描いた葵に舞う黒蝶を見つめた。
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