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記念式典が終わると、ロビーには人が溢れていた。
そのままホテルのラウンジに流れる者。
近くの居酒屋に流れる者。
そして、お決まりの一夜限りのお遊びに消えて行く者…。
ロビーの片隅で、病棟のスタッフ達と話し込んでいた私が振り向くと、既に病院関係者の姿は疎らになっていた。
あれ?…綾子と先生は?
首を伸ばして辺りをぐるりと見渡す。
―――いたっ!あんな所に。
入り口付近に視線を飛ばすと、大理石調の丸い柱にもたれ掛かる綾子と先生の姿が見えた。
二人で何を話してるんだろ…
私はスタッフに別れの挨拶をして、その場を離れた。
なんか…真面目な話でもしてるのかな…
肩に掛けたショールを直し、様子を窺いながら二人に近づいて行く。
先生は腕組をして柱にもたれ掛かり、頷いてただ綾子の話を聞いている様に見えた。
眉間に深いしわを寄せる先生の表情が気になる。
「綾子?先生?」
話を遮るのに申し訳ない気もしながら、遠慮がちに声を掛けた。
「あぁ、唯。病棟の人達とはもう話いいの?」
私に気づいた綾子が、パッと表情を変えて笑い掛けた。
「うん。もう挨拶して来たからいいよ」
「話が盛り上がってるみたいだったから声掛けづらくて。綾さんとここで話しながら待ってたんだ」
綾子に置いた視線を戻すと、先生はいつもの柔らかい笑顔を私に向けていた。
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