最後の手紙

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――――――― 秋の夜空に別れを誓ったあの日から、2週間が経った。     私がいつもの様に出勤をすると、休憩室には中間人事異動の辞令が貼りだされていた。     産休や途中退職したスタッフの人数調整の為に、毎年春と秋に人事異動が行われる。       今の呼吸器科病棟で一番の古株となっていた私は、内科ドクターである水島先生と接する機会の少ない、外科病棟への異動が決まった。     なんてタイミングなのだろう…     これでもう、職場で先生と言葉を交わすことも無くなる。     本当に…私達の接点も断ち切られたんだ…。     茫然と辞令の前に立ち竦んだ。     そして、湧き起こる心の奥の淋しさを打ち消すように  「これでやっと心にけじめが付けられる。これはきっと、神様からの辞令なんだ」…心の中で何度も自分に言い聞かせた。      私の人事異動の知らせを聞いた先生は、   「外科病棟か…あそこも大変だけど頑張れ!申し訳ないけど送別会には行かないよ。…淋しくなるから」   記載していたカルテを見つめたまま、小さな声で呟いた。     
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