二人の選択

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怖い?…     そうか…私…     怖いんだ…。     だから素直に飛び込めないんだ…。     私は躊躇いながら、怯えた目で先生を見上げる。 「先生…私、怖い。またこの一線を越えてしまったら、どうなっちゃうのか…自分が…全てがどうなってしまうのか…それを想像するのも怖いの。…先生が隣にいてくれる、この今さえ夢みたいで…信じられなくて…」    頬を伝う涙を隠そうと下を向いた。     「夢じゃないから…俺、ここにいるよ?」     先生は、私の体を包み込むようにふわりと抱き寄せた。     先生の胸…いつも私を優しく包み込んでくれた温もり…     力強く抱いてくれた、この安心感と幸福感…。       もう二度と触れられぬ事が苦しくて、体に刻み込まれた記憶さえも忘れてしまいたいと願った、この温もり。       でも… 夢じゃないんだ…       先生は…ここにいる。     「先生…愛してます」   燃えるような情熱を返すように、彼の背中に回した手に力を込めた。
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