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淡いクリーム色のカーテンからは、微かに朝の光が射し込む。
涙が枯れるほど泣いた私はベッドに腰掛け、床に差し込む光のラインにただ視線を置いていた。
「唯…」
先生が温かい緑茶が入った湯呑みを渡してくれた。
「…ありがとう」
脱力感で重く感じる手を伸ばし、私はそれを受け取る。
両手で湯呑みを持ち、手のひらに伝わる温もりを感じながらゆっくりと一口飲んだ。
「少し気分落ち着いた?」
珈琲カップを持った先生が微笑みながら横に座る。
「うん…」
「そうか…良かった」
彼は私の肩に手を回し、頭を優しく撫でながら深呼吸をした。
「実は、俺も恐かったんだ…。一度は唯を奪って、全てを捨てる覚悟だった。でも、それが本当に唯の望む事なのか。これからの人生、俺が唯の幸せを奪うんじゃないか。いつか唯は後悔するんじゃないか…唯を腕に抱きながら、そんな事ばかり考えてたんだ。
次にさゆりの泣き叫ぶ顔が目蓋に映って…本当は俺、手が震えてた。ここまで連れて来ておいて、情けない話だよな…」
先生は珈琲カップの中に視線を落としたまま、大きなため息をついた。
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