永遠の恋人 最終章

7/14
前へ
/16ページ
次へ
「じゃあ、…またね」   笑顔でそう言うと、先生は軽く片手を挙げ病室を後にした。 その笑顔と後ろ姿が、私が見た最後の先生の姿となった―――。       そして、 産休を終えると同時に、私は子育ての為に退職をした。     秋―――― 先生とさゆりさんとの間にも、無事元気な女の子が誕生したと綾子から知らせが届いた。     時々綾子から聞く先生の職場での様子。     唯一、それだけが先生の存在を現実のものと感じられる時間であった。     初めての専業主婦、初めての子育て。 毎日同じ事の繰り返しではあったが、娘と過ごす緩やかな時間に安らぎを感じていた。   その年の冬を越して、春――― 直人は、同じ系列の会社に転職をした。   以前の会社とは違い泊まりの出張もなく、東京へ行く必要もなくなった。     私が直人のもとへと戻った日以来、直人は勿論の事、私もまどかの話を持ち出す事はなかった。     まどかの事は忘れよう…     直人を信じよう。     ―――それが私のできる直人への唯一の償いだった。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

392人が本棚に入れています
本棚に追加