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「あっ、もしかして今、先生ジェラシー感じちゃった?」
綾子がベビーベッドに手を掛けたまま振り返り、先生を見上げて「イヒヒ」と悪戯気に笑った。
「えっ!?ジェラシーって…」
「ちょっ、やめてよ綾子!子供の前で…」
私は眉間に深いしわを刻み、綾子に厳しい視線を飛ばす。
「ごめん…冗談が過ぎました…」
私に叱られシュンとする綾子。
「ははっ!そうだね。ちょっとだけジェラシーかな。名前は?女の子だから…凛(りん)ちゃんかな?」
綾子の無神経な発言に一瞬はたじろいだものの、母親に叱られた子供のような綾子を気遣って、先生は明るい声で言葉を繋いだ。
「うん。主人も賛成してくれたから【凛】に決めた。…ねっ、凛」
私は愛しい娘の小さな指を手のひらに乗せ、満面の笑みを放つ。
「唯…今、幸せだよな?」
私と凛を見つめ、先生が優しく微笑む。
「うん。幸せだよ。…先生も幸せでしょ?」
私は凛の頭を撫でながら、彼に穏やかな笑みを返した。
「うん。俺も幸せだ。自分にとって大切な人が、みんな笑ってる。これがきっと、本当の幸せなんだよな」
先生は柔らかな声で言って、優しく目尻を下げた。
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