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すると、女性が悠哉の胸にポンッと手を置いた。
「大丈夫よ。待ち合わせの時間を過ぎたわけじゃないんだもの。それより、悠ちゃんもたまにはお店に顔をだしてほしいものだわ」
「女将、ここは会長の行きつけの店だ。俺がそんな簡単に出入りするわけにはいかない」
そう言うと、悠哉はそっと女将さんの手を取って離しニコッと微笑んだ。
「あらやだ。そんなの関係ないわよ。悠ちゃんなら、いつでも好きなときにここを使ってくれていいんだからね」
そして女将さんもニッコリ笑っていた。
…これが大人の女性の色気?と言えばいいんでしょうか。
長いであろう黒髪をアップでまとめ、和装姿にどこか品のあるその仕草。
控えめな化粧のはずなのに、目鼻立ちがとても綺麗。
そしてその独特な声のトーンに言葉遣い。
う、うらやましすぎる。
なんて上品で落ち着いた雰囲気なんだろう。
自分にはないものを持っている女将さんを、私はジイッと直視していた。
すると女将さんが私の存在に気づいたのか、パッと目が合った。
「あら、いらっしゃい。悠ちゃんが女性を同伴だなんて、初めてじゃない?」
その言葉に、悠哉が頷いた。
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