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「失礼します。軍二さん、悠ちゃんたちがいらっしゃいましたよ」
女将さんが、襖の向こうに声をかける。
「ああ、そうか。入ってくれ」
その返事に、そっと襖を引いた。
そして、靴を脱いだ悠哉と私を中へと誘導していく。
その部屋は12畳くらいの広さがあり、もちろん生け花や掛け軸やらが飾られている。
高級感は変わらずだけど、和な雰囲気がどこか自分を和ませた。
会長の手前側に悠哉が座り、私もその隣に並んで座る。
「只今、悠ちゃんたちのお飲み物を持って参りますので。どうぞごゆっくり」
ニコッと微笑みながらそう告げて、女将さんが部屋を後にした。
まず声をかけたのは悠哉。
「待たせてしまいましたか?」
「いや、そんなことはないよ。ここへ来る前に友人と会ってたんだ。久しぶりに会った友人で、長話になってしまってね。その後ここまで送ってもらったんだよ」
「そうでしたか。俺はてっきり、時間を間違えてしまったかと…」
悠哉の話を聞きながら、会長がクスッと笑うのがわかった。
「悠哉」
「はい?」
「ここは会社じゃない。敬語はやめなさい。普段のお前で話してくれて構わないよ」
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