悠哉もですか!?-2

11/24
前へ
/40ページ
次へ
「彼がその死をもって悠哉に教えてくれなければ、私には止めることができなかったのでは?これが実の繋がりというものなのか?…あのときは、そんな思いに駆られていたよ。悠哉を引き取ってから、特にその境界線を意識したことはなかったんだがね」 そして、どこか少しさびしそうにクスッと笑った。 会長の心を思うと、私の胸の中がどこかせつなさで詰まっていく。 きっと会長の胸の中は、私の中にはない、その味はいったいどんなものなのか触れたことのない、複雑な感情に違いない。 私がそう簡単に立ち入ってはいけない気がした。 すると、女将さんが声をかけて中へと再びやってきた。 「はい、健ちゃんたちの飲み物はこちらで。…今からお料理も運びますので、少しの間部屋を行き来させて頂きますね」 そして、料理を運ぶ仲居さんが次々にやって来る。 その様子を楽しそうに眺めている黒田さんだったが、またも悠哉に首を引っ張られていた。 「なるちゃん」 「はい」 呼び掛けに、会長へ視線を送る。 「悠哉は、母親の愛を知らない」 その言葉に、息を飲んだ。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

919人が本棚に入れています
本棚に追加