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そんな疑問でいると、黒田さんが私の手を握ってきた。
「なるちゃんはお酒にする?」
「あ、私あまり強くないので、お茶で…」
「そうなんだ。でも、少しくらいなら大丈夫でしょう。酔ったときはちゃんと俺が介抱してあげるからね」
そう言ってニッコリ。
するとその行動を見て、悠哉はすかさず立ち上がり、私から黒田さんをグイッと引き離していった。
「なる、お前はこっちにこい」
そして私を立たせ、ここへやってきたときのように元の位置へ。
その様子を見ていた会長が呟く。
「自分のことしか考えず、一匹狼みたいな子だったのになぁ…」
そしてどこかクスクス。
それに専務が続けた。
「相沢さんが秘書になったあたりから、社長がとても明るくなったように思えます」
その言葉にニコッとして、ウンウンと頷いた。
私は、専務の口からそんな言葉が聞けるとは思わず、嬉しいような恥ずかしいような心境になった。
「悠哉」
「…はい?」
会長の声に、悠哉が顔を上げる。
「この出逢いに、感謝することを忘れないように」
会長の言葉が、部屋の中に響く。
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