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「………え?」
泉社長が何を言ってるのかわからず、見つめ続けた。
「最近行われた会合で夏野社長に会ったとき、もうひとつ気づいたことがある」
…会合?
「彼の顔を崩せるのは、君しかいないってね」
「……え?」
「どんなに取引を奪おうと、片桐さんに声をかけて仲間を揺さぶろうと、顔色ひとつ変えずに淡々と凌いでいく夏野社長だったんだけど…。君の名前を出したときは違った。彼は平常心でいたつもりだろうけど、しっかり伝わってきた。心の中では、俺に腹を立ててるってことがね」
そう言って、ゆっくりベンチから立ち上がる。
その立った場所から、私を見下ろしてきた。
「彼の顔を崩せるのは、君しかいないんだよ」
そして、ニンマリ笑った。
「今、夏野社長は会長さんたちと食事中。そんな夏野社長の恋人は、俺の目の前にいる」
…え?何?
何?
「大事な仕事と、大事な恋人。それらを天秤にかけたとき、彼はどっちを選ぶのかな?…これって、最高に面白そうじゃない?」
そう言ったかと思った瞬間、急に泉社長は私の前に来て、左手首をガシッと強く握りしめてきた。
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