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知らないけど、もしかしたら何かを感じていたのかもしれない。
だから私に、彼に近づくなって言ってきたのかもしれない。
それなのに…。
私、何やってるの?
頬をつたっていく涙を、溢れてくる涙を、これ以上流してなるものかとグッと堪える。
私は顔を上げ、足早に歩き続ける泉社長の背中を、再び見つめた。
このままおとなしく連れていかれるつもり?
彼の思うようにさせていいの?
無理でも抵抗しなきゃ。
力が及ばなくても、抵抗しなきゃダメじゃない!
彼が力強い手で私を引っ張ってきた場所は、駐車場?
いつの間にかホテルを出て、車が何台も並んでいる建物へ入っていた。
若干足の運びを緩めて、辺りを見回している。
…車を探してるの?
そう思った私は、さっきまで荒かった呼吸をしずめようと、ゆっくり息を吸った。
そんな私の手首に、再び力が。
自分の車を見つけたのか、その場までさらに足早に。
焦らないで…。
手を振り払えるチャンスを、逃しちゃダメ。
そう胸の中で呟き、彼の様子をうかがっていた。
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