君しかいない-1

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知らないけど、もしかしたら何かを感じていたのかもしれない。 だから私に、彼に近づくなって言ってきたのかもしれない。 それなのに…。 私、何やってるの? 頬をつたっていく涙を、溢れてくる涙を、これ以上流してなるものかとグッと堪える。 私は顔を上げ、足早に歩き続ける泉社長の背中を、再び見つめた。 このままおとなしく連れていかれるつもり? 彼の思うようにさせていいの? 無理でも抵抗しなきゃ。 力が及ばなくても、抵抗しなきゃダメじゃない! 彼が力強い手で私を引っ張ってきた場所は、駐車場? いつの間にかホテルを出て、車が何台も並んでいる建物へ入っていた。 若干足の運びを緩めて、辺りを見回している。 …車を探してるの? そう思った私は、さっきまで荒かった呼吸をしずめようと、ゆっくり息を吸った。 そんな私の手首に、再び力が。 自分の車を見つけたのか、その場までさらに足早に。 焦らないで…。 手を振り払えるチャンスを、逃しちゃダメ。 そう胸の中で呟き、彼の様子をうかがっていた。
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