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「キャッ!」
見事に裾を踏んづけ、ズザザッと膝から倒れるように転んでしまった。
「…あっ…、痛っ」
もう!こんなときに。
何やってるの?
ダメ!
痛がってなんかいられない。
…追い付かれちゃう。
どこか…、どこかに隠れなきゃ。
膝をかばいながら、目の前にあった車の後ろに回り込む。
そしてその場にしゃがみ、息を殺した。
今聞こえているのは、自分の胸の大きな鼓動だけ。
その音だけが、やけに響いている。
そんなに間をあけることなく、誰かが走ってくる足音が聞こえてきた。
両手を握りしめ、震えてしまう手をなんとか抑え込んだ。
自分の耳を、きっと泉社長であろう足音へと集中させる。
その聞こえていた足音が、自分のいる場所から遠ざかっていくのがわかると、ホッと息をもらした。
未だ震える手で、ケータイを取り出す。
ゆ、悠哉に。
悠哉に連絡を…!
ケータイの画面に悠哉の番号を出したそのとき、ドクンッと胸の中でさらに大きな音がした。
…電話、していいの?
ここで悠哉に電話して、大丈夫なの?
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