君しかいない-1

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「キャッ!」 見事に裾を踏んづけ、ズザザッと膝から倒れるように転んでしまった。 「…あっ…、痛っ」 もう!こんなときに。 何やってるの? ダメ! 痛がってなんかいられない。 …追い付かれちゃう。 どこか…、どこかに隠れなきゃ。 膝をかばいながら、目の前にあった車の後ろに回り込む。 そしてその場にしゃがみ、息を殺した。 今聞こえているのは、自分の胸の大きな鼓動だけ。 その音だけが、やけに響いている。 そんなに間をあけることなく、誰かが走ってくる足音が聞こえてきた。 両手を握りしめ、震えてしまう手をなんとか抑え込んだ。 自分の耳を、きっと泉社長であろう足音へと集中させる。 その聞こえていた足音が、自分のいる場所から遠ざかっていくのがわかると、ホッと息をもらした。 未だ震える手で、ケータイを取り出す。 ゆ、悠哉に。 悠哉に連絡を…! ケータイの画面に悠哉の番号を出したそのとき、ドクンッと胸の中でさらに大きな音がした。 …電話、していいの? ここで悠哉に電話して、大丈夫なの?
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