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もし今連絡したら、…本当に、泉社長の言ったように、悠哉に選択させてしまうことにならない?
そう思った瞬間、ケータイを見つめながら、固まってしまった。
どうしたらいいのか、わからない。
少しずつ、呼吸が荒くなっていくような感覚に陥っていく。
涙が、止まらない。
「…うっ…、っ…」
…もう、ホント弱いんだからっ。
泣くなってば。
ちゃんと、考えて。
悠哉なら…。
悠哉なら…。
電話したとしたら、何て言う?
電話しなかったとしたら、何て言う?
手の甲で涙を拭い、呼吸を整える。
再びケータイを見つめ、ギュッと握りしめた。
決意した私は、悠哉の番号へ電話をかけた。
悠哉なら、…電話しなかったら絶対怒るはず。
なんで連絡しなかったんだって、絶対に言ってくるはず。
そして、ケータイを耳にあてた。
私の耳元では、コール音と共に自分の心臓の音までもが聞こえていた。
しばらく、その音が続く。
お願い、出て!
何度も何度も、胸の中でそう呟いていた。
けれど、いくら待てども、悠哉が電話に出ることはなかった。
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