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しばらく、というか、どれぐらい自分の身体を抱いていたのかは定かじゃない。
私は目をギュッとつぶり、震えと戦っていた。
次に目を開けたのは、車のドアが開く音が聞こえたとき。
ハッとして、慌てて顔を上げる。
運転席に、悠哉が乗り込んできた。
背もたれに寄りかかり、ドアをバタンッと閉め、そして視線を私へゆっくり移してくる。
その表情は、思っていたよりも落ち着いていた。
…よかった。
どんな会話をしてきたのかはわからない。
何を話してきたのかなんて、聞けない。
でもその表情に、胸の中でいくらか安堵する。
お互いに見つめ合っていると、少しして、悠哉の手が私の頬に伸びてきた。
優しく触れる。
その仕草に、手のぬくもりに、いつの間にか身体の震えは感じなくなっていた。
悠哉が頬から手をゆっくり離すと、私の前にウォレットを差し出してきた。
「あっ…」
すっかり忘れてた。
「ありがとうございます」
それをギュッと握りしめると、次に悠哉が口を開いた。
「…大丈夫か?」
私はウォレットから顔を上げ、悠哉を見つめた。
再び視線が重なる。
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