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声がしたと同時に、後ろから手が回ってくる。
なるが、抱きついていた。
その柔らかな感触に、俺の心はすぐに緩んでいった。
自分の身を紐でギュッと引き締めたところだったんだが、なるは、簡単にその紐をほどいてしまうんだな。
もちろん悪い意味ではない。
それは、強張っている身体を癒してくれるような、とても優しいもの。
俺は後ろへ視線を運んだ。
なるが抱きついたまま、見上げてくる。
シャワーを浴びてきたせいか、ほんのり顔が火照っているようだった。
首もとが大きくあいているラフなシャツは、鎖骨から胸元までをきれいに見せている。
右側に流しておろしている長い髪の毛はまだ乾ききっていないのか、しっとりとまとまっていた。
色気を漂よわせているかと思っていたのに、俺と目が合うと、クスッと笑った。
どこか恥ずかしそうに。
…ああ、まずい。
昨晩から今の今まで、なるの大人な雰囲気を感じていたんだが。
ここでの笑顔は、どこかいたずらっぽさを感じてしまう。
そのギャップに、心がくすぐられてならなかった。
たまらず抱き締めたくなり、なるの手を取って振り返った。
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