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…が、手にしていたコップが邪魔をする。
これでは両手で抱き締められないうえに、思いきりなるに触れられない。
俺は無言のままなるから離れ、ダイニングテーブルへ。
そのテーブルにコップを置いた。
そして振り返る。
そこには、首を傾げ不思議そうに俺を見つめているなるがいた。
その表情さえも、俺の胸をくすぐらせていく。
想いだけを先走らせることなく、足早になるのもとへ駆け寄った。
そして動きを止めることなく、流れるように、そのまま大きく抱き締めた。
「あ、あれ!?…どうしたんですか?」
俺が再び戻ってきて抱き締めてくるとは思わなかったのか、胸の中でジタバタしはじめる。
なるの熱帯びる身体につられ、俺の身体も熱くなっていった。
しばらくして、その抱き締める強さに、なるは自然と身を寄せてきた。
…気持ちを、伝えたい。
それは、純粋な想いからだった。
抱き締めていたなるの身体をそっと離し、代わりに手をそれぞれ握った。
なるは握られた手を見た後、目を見開いて顔を上げてくる。
視線が重なった。
大きな瞳を覗き込む。
「…なる」
「は、はい?」
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