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私は悠哉の瞳を見続けながら、コクンと頷いた。
私なら、大丈夫。
悠哉がそばにいてくれるだけで…、今はそれだけで、大丈夫。
そんな想いを込めていた。
けれど、しばらくして悠哉が私からフッと視線を外し、顔を下げる。
なぜだろう。
落ち着いた表情なのに、その視線の外し方に違和感を感じた。
…泉社長との会話で、何かあった?
悠哉の瞳からそれを読み取ろうと、一所懸命に横顔を見つめていた。
いてもたってもいられず、声をかける。
「……悠哉?」
その呼び掛けに悠哉はこちらへ顔を向けてくれるも、視線を合わせることなく続けてきた。
「…家に、帰ろう」
私は少し間をあけた後、とまどいながらも返事をした。
「…はい」
そして、持っていた鍵を悠哉へ渡す。
それを受け取ると、車のエンジンをかけた。
真っ直ぐ前を見て、車を走り出させる。
家に着くまでの間、車の中はとても静かだった。
その空気に、全くいい予感なんて感じない。
むしろ、変な緊張が私の胸の中を埋め尽くす。
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