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俺はその手をゆっくり掴み、顔を覗いた。
「…なる」
その呼び掛けに、なるが口を開く。
「あ、あの!別に、言葉は言ってくれなくてもいいんです!…あ、言葉はっていうか、あの、ただ思い付いただけであって…、その…」
どこを見て話しているのか。
後半は声を小さくして、ボソボソ続けていた。
…言葉は言わなくてもいい?
それを聞いて、ピンときた。
ああ…、そうか。
つまりなるは、俺にキスしてほしい。
…そういうことか?
確信を得たような表情で、なるを見つめた。
すると、俺にチラチラ視線を送っては、困った様子で小さくなっていく。
そんななるに、ニヤリと笑った。
すると瞳を大きくして、一気に顔が赤くなっていく。
顔を下げては上げ、下げては上げの繰り返し。
「…おいおい、落ち着け」
そう言って、クスクス笑った。
いいか。
しっかり俺を見ろ。
なるの顎に触れ、クイッと顔を上げた。
ギリギリまで顔を近づけて、なるの望んでいる言葉を呟いていく。
「…口は、…どうするんだった?」
そう言って、ニヤリと笑った。
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