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そんな素振りを一切見せない悠哉だけど、きっと心の中では皆のことを思ってる。
会長のことも、お手伝いさんたちのことも。
だって、無事に向こうへ着いたかどうかきちんと確認していたし、私にもちゃんと報告してくれたし。
その連絡のやり取りの後、私を真っ直ぐ見つめてきたかと思えばすぐに肌へ触れてきた。
それはどこか、ひとつの思いをまぎらわそうとする幼い子供のようで。
きっと、寂しいんだろうなぁ。
悠哉の歩幅に自分の足を合わせながら、私は手をグッと握りしめた。
気合いを入れるために。
私、がんばる!
会長にも、黒田さんにも言われたけど。
…いや、違う。言われたからやるんじゃない。
私が、悠哉のことを一番に理解して、これから何があろうと強く支えたいの!
いやいや、そこも違う。強く支えるの!
フンッと鼻を鳴らすほど意気込んでいると、悠哉が社長室のドアの前で立ち止まり、私のことを見つめていた。
…あ。まずい。
見られてたかな?
なぁんて思ったのも束の間。
手首をガシッと掴まれると、ドアを開けて勢いよく部屋の中へと引っ張られていく。
「あぁっ!ちょっと!」
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