兄様

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 新学期が始まったばかりの校舎内は埃臭く、未だ残る肌寒さと相俟って春の訪れを感じさせる  新入生の真新しい制服が、二年も経てば自分の着る制服の様に草臥れて身体に馴染んでいくのかと、ふと考えると余り好きでは無かったこの黒制服にも愛着が沸く  三年にも為れば殆どが見知った顔にもなるのに、今回ばかりは違った様だ  教室の隅の机に居座り沈黙しながら外を眺めて居る、綺麗な男が居た  兄様にも劣らぬ程の整った五体を持っていそうだ、そう考えて思考を停止させた  得体の知れない男に構う隙等無い、そもそも兄様に敵う輩等認めない、存在させない  僕にとって兄様は、絶対君主なのだから
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