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僕が独りで葛藤をしている事も露知らず、そいつは兄様の様な少し色気の含んだその顔で僕の名前を呼んだ
そいつの白く綺麗な指先は、頬を撫で、耳を擽り、首筋を這った
普段人目に触れない首筋の、椿に触れるか否か、それは琴線に触れた
僕と兄様の領域に踏み込まれる様な、侵されて仕舞う様な、そんな曖昧な感情は束に成って僕を畏怖させた
僕には兄様しか居ない、兄様には僕だけでいい、他には何も要らない其れだけの関係が、こんな得体の知れない奴に崩されて堪るかと、気付けば環状線が闇に消え入る夕暮れの空を仰いでいた
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