兄様

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「昨日の相手は自棄に怯えていた」  兄様は煙草を喫みながら徐に口を開いた 「兄様に、怯えて?」  彼が言う言葉には重みこそ無いものの、僕に対しては誠実を魅せてくれる  そんな彼が魅力的だったから、怯えるなど解らなかった  此方のこんな思いとは裏腹に、上の空な様子で変わらずに煙草を喫んでいた  口許に運ばれる葉巻が羨ましい、すぼまる唇はしっとりと其を包み込んで甘く余韻を残す 「久し振りに独占欲が沸く」  彼の唇に見とれていた此方に視線を放り投げると態とらしく笑ってみせた
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