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鏡に映る自分の首筋には、それこそ小さいもののはっきりと主張する椿が在った
何時から、どのようになどと問われても答える術は無い
物心ついた時から其処には椿が咲き、またその椿を隠す様に襟足だけが伸びていた
指先で、其処に触れてみる
火傷の痕のように僅に抉れた皮膚が描くため、決して綺麗と言う訳では無い。それでも彼は何時も此処を、慈しむ様に唇や舌で撫でていく
小さく息を吐くと、回想を振り払う様に頭を左右に振る
白く滑らかな素肌にYシャツを羽織り、制服に着替えてもう一度鏡を見る
学ランと伸びた襟足に隠された椿はもう誰も見ることが出来ない
椿の存在は、僕と兄様しか知らない
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