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菊の意識が、何処かに飛んでいる。
「あんた誰だ?名乗れ!」
ニイーと笑うのは、何時もの菊ではあるが…
「お前は誰だ?」
何時もより…
邪悪さが…
「菊はそんな邪悪じゃない!?お前は誰?」
オマエハダレダ?
まごつく前を突飛ばし左門が吼える。
「その!戻らないつもりか!?」
ソノ?ワタシハソノナノカ?
「ワタシハダレダ?」
共鳴?いや、違う!
「菊!!戻れ!!戻って来るんだ!!」
左門が菊に馬乗りになっている。
「どう言う事だ!!」
前は意味がわからない?
「御霊が…いや違う。」
左門が躊躇する。
前が笑っているように見えたから…自分自身が何かの術中に嵌まっているのだろうか?
ワカラナイ
ワカラナイ
「なぁー、俺は誰だ?お前の知っているゼンとはなんだ?」
だから、…している場合じゃない?
「今やれる事の全てはする。絶望なんかしている場合じゃありませんよ!!」
自分の口からキツい叱責が翔んだ。
「果心!!あんたの絶望を、わしは…カラスが黒いなんて誰が決めたんじゃー!!」
何で混乱している!?
「此処ではないなぁー…。」
菊が…只一声そう言って…蘇生した。今の現象は?自分のが意識を失っていたのか?左門が驚いている。
「あー、良かった!?あんたに死なれたら…。世の中にハンサムが居なくなっちゃう!?」
幻覚だったのだろうか?何時入れ代わったかわからない。居ない筈の新参者が控えていた。同行者に覚えは、無いぞ…父が着けたものか?
「キクキリ…。無事だったのか…。」
思わず熱い抱擁、人目がある事すら左門は気付いて居ない。
「大久保様の前なんだけど?」
渦中の大久保様が異様な物をみる目付きで立ち去り、全てに口止めをしてくれた。
「私貴方と知り合いになる予定なのね?」
控えた少年が、転がりでる。
「支倉常長と申します!!以後お見知りおきを。」
菊がニヤッと笑うと、ツネナガに渡す物を預かったと懐から何かを取り出した。
「ヤヘスから、使節団へこれを渡してだって。意味は後でわかる筈よ。」
やはり大久保様は…何かを知った。常長の登場でゼンが消えている事に関係するのか?
「大久保様と言っても、向こうが知っているのは、父親の方らしいわね?」
菊が一言残して立ち去る。左門の前には荒廃した屋敷跡が広がるばかりだった。
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