物語の一番

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江戸から、早馬が国本へ 大久保一族の政治的失脚と粛清が伝わった。 無表情のまま左門は父の顔色を伺っている。 片倉小十郎重綱、後の世に鬼小十郎と呼ばれる。片倉家の嫡男 鬼と呼ばれる男の物語、それが始まったのは何時か? 長い沈黙の後 「何を考えています?」 口を開いたのは、父の方 「真田に、知らせればよいか?考えていました。」 どちらの真田か?と問う迄もなく 「徳川の派閥争いを無駄に教える迄もないでしょう…。他になにかありませんでしたか?」 実子に対しても、妙に丁寧口調 「大久保様の屋敷跡にて、面白い話が聞けた位でしょうか?」 屋敷跡?左門はそう言って父の反応を監察する。 遊興として、京に 左門はさっさと戦を始めていた。 大久保が何を探り、失脚するかを 「それで潰れる我が殿ではありません、心配には及ばずと伝えておきましょう。」 何かを言いかけて、左門は止めた。 形にならない違和感… 父は何時から気付いていた?大久保の屋敷より点々と去る物の痕跡… 「あれは、成実が気付かぬまました事です…。」 一瞬で異界に取り込まれる感覚に左門が驚いていた。
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