事の始めの一番

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座敷わらしと言う妖をご存知だろうか? 富貴思いのまま 座敷わらしが棲む家は栄え 出ていけば没落してしまう。 大久保様の邸に呼ばれた菊は怪訝な顔をしている。 妙な知り合いと鉢合わせしたからだ。 「いやあ、これは奇遇でございますね!?」 相手の方から、声をかけて来たので、ただ朗らかに菊も返しただけなのだが…。 左門 後に、片倉小十郎重綱 鬼小十郎と呼ばれる男 普段を知る者がこの様子を見たら、腰を抜かすに違いない。 存在感だけはやたらとある が 滅多に口を開かない それは名前の重の如し 一度発言すればその言葉の重き事 鋭き事 二度と立ち直れぬほど心を抉る。 敵に回せば、その一言が心を回復不能に滅多斬り それがなんとまあ、爽やかに菊と世間話 普段を知って居たら腰を抜かすだろう間違いなし! 「で、要件は何かしら?」 「大久保様に、使節団の話を聞こうと思い、寄った迄ですよそちらは?」 ただの世間話 だが相手が菊となると… 「何を密談しているのでございますか?」 大久保邸の家人が、聞き耳を立てて居る。 「私は大阪の話をちょっとなんだけど、倒壊した伏見城の事も聞いてみたいと思ってね!?」 とりあえず情報の公開はした。 爽やかに大声で世間話のごとく 屋敷の奥がざわついている。左門にも気配は理解出来ている。
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