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「私は三良よ。よかったら、あなたの名前も聞かせてくれるかしら?」
男の子は俯き気味に私を見ると、口をごもごもと動かした
「かず…だよ。さぶろー。」
「そう、かずっていい名前ね。あなたにぴったりだわ。」
にっこりと笑ってやると、かず君も緊張が解けたようで強気な表情に戻った
「かず君は猫が好きなの?」
「うん!だから、あのネコをつれてかえるんだ!」
かず君はぴょんと元気よくジャンプした
その様子を見て、私はさっきより強くかず君の手を握った
すると、かず君はきょとんと首を傾げる
「お母さんには言ったの?」
かず君は黙った
だけど、私は更に言葉を並べた
「かず君は、猫を拾おうとしたの。でも、おうちに帰ったらお母さんはダメって言ったわ。
その時、あなたに抱きかかえられた猫はどうするの。」
「…な、ないしょでそだてるよ!」
一人で育てる
その言葉は大人だったら安心できたかもしれないわね
でも、かず君は私の腰ぐらいまでしか背が無い子供なの
「…猫は死んでしまうわ。」
かず君は、[死]という単語に固まって、そしてすぐに眉を下げて泣き出した
その声は次第に大きくなって、かず君は大声で泣いたと思ったら
「さぶろーのバカ!!」
それだけ言って、走ってどこかへ行ってしまった
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