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「ちょっと…厳しいんじゃない?確かにママの言ってることは正しいとは思うけど…。」
今まで黙っていた史君が困ったように笑った
「ふふ…そうかもしれないわね。でも、あの子にはあれくらいが丁度いいの。
寝たらすぐ忘れちゃうかもしれないしね。」
だって、命って大切だもの
そして、無くしてしまったら元には戻らないし、残るのは傷だけ
あの子には傷ついてほしくない
「それに…ほら、見て?」
小声で言うと、史君は私の指差した方向を見た
「あ…。」
ここから少し遠い建物の壁から大きな瞳がこっちをじーっと見つめている
「きっと、あの子ね。さっきの猫の命を繋ぎ止めているのは。」
「え?」
よく見ると、子猫の入っていたダンボールには猫缶や小さいボールなどが入っていた
多分、あの私たちを見つめる女の子があげたものだと思う
「さっきからずーっと私たちを見てたのよ、猫を苛めないか心配だったのかしらね。
ここまで来て面倒をみてあげてるような子だもの。優しいのよ。」
「…でも…猫にとっては家に置いてもらった方がいいんじゃ…。」
「それは、どうかしら?」
―ーにゃぁ
暗い路地裏から現れたのは、さっきの猫だった
「どっちがいいかなんて、この猫にしか分からないじゃない。」
史君は猫を見て、目をぱちくりと瞬きさせると、すぐに大口を開けて笑った
「…本当だね。あはは!」
裕福で不自由の無い生活より、いい事って沢山あるものよね
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