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「財布落ちてましたーっ!」
交番のお巡りさんがあんぐりと口を開けて、私たちを見た
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「ご苦労様です、そういえば…何故、あんなに息が荒かったのですか?」
「はは、交番まで追いかけっこというか…僕達子供っぽい所があるんですよね。あはは。」
お巡りさんと史君の中に流れる和やかな雰囲気
落し物の申請という事で、色々と聞かれている最中である
私達の高校が知られた時には若干警戒されたような感じもあったけれど、すぐに和解したみたい
「では、持ち主が見つからなかった場合ご連絡しますね。」
私達は交番から出た
「史君…財布いいの?史君のよね?」
「いーよ。捕まった時の治療費より安いからね。
喧嘩から逃げてきたなんて言ったら、話がややこしくなっちゃうし。」
「ありがとう。」
色んな事に感謝しなくちゃね
また不良に絡まれないように、人が多い道を選んで寮に向かう事にした
置いてきてしまった食材を諦めるのは悲しかったけれど、仕方ない
「あー、あんなの初めて…。」
さっきの事を思い出したのか、くすくすと笑う史君
「史君は喧嘩が、楽って言ったけど…。」
「うん。」
「楽しいのはこっちの方じゃない?」
私は笑う
史君は一瞬ぽかんとすると、すぐに大口を開けて大笑いした
「本当だね…。」
町の騒音の中でもはっきりと聞こえる笑い声だった
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