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「そ、そりゃあ痛いけど…これ、あなたがやってくれたの?」
まあ、お世辞にも上手いとは言えないけれど。
「ああ。酷い怪我だったからな」
「ありがとう…」
彼は何も言わなかった。
「ってそんなことより、私聞きたいことがたくさんあるんだけど…
私は秘密基地…いや、神社にいたでしょ?何で今こんな所に…」
息が止まりそうになった。
横になっている私の顔を覗き込んで来たことで、彼を初めて視界に捉える。
漆黒の瞳に、同じ色の長い髪が風にさらさらと靡(なび)く。
着物─とはちょっと違うけど、下が動きやすそうな黒っぽい赤の和服がよく似合う。
私と同い年か少し上くらいかな。
男の人なのに、綺麗という言葉がぴったり。
ああ、何だかどうしようもなく苦しい。
でも無条件に引き寄せられている。
なぜか自分の感情のコントロールが利かなくなりそうになる。
ただ、この人を視界に捉えただけなのに。
それだけで胸が掻き乱されたようになるのは、なぜ?
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