水銀灯と優しい瞳

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こんなにも優しく こんなにも悲しい目をわたくしは知らない きみの瞳の前では わたくしの存在は まるで希薄になり まるで幻のようだ わたくしという幻は 明滅する水銀灯 それは夕日の手前の あるかないかの雲のようなものだ それは夕暮れの手前の あるかないかの時間のようなものだ それは秋の空のようなものだ 山にはきいろとオレンヂを敷き詰めた絨毯が広がる 時は流れ続ける思いのせせらぎ 心は移りゆく有限の季節 常に姿を変え わたくしを翻弄する だから今のきみの瞳を わたくしの心に刻もう 今のきみの思いを わたくしの体に刻もう
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