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「私ね、あの人達には感謝してるの。
私の、一番大切な部分を命懸けで守ってくれたのだから」
私は涙の止まらない匡にキスし、服を脱いだ。
「未だに私だけのもので、匡だけに捧げる事が出来るのだから」
「ユリ…」
「私ね、子供が5人、欲しいの。
あの人達を、私が産んで生まれ変わらせてあげたい。
そうして、恩返しをしてあげたいの」
もう、“ありがとう”の言葉すら、言えない人達だから…
“赦す”も“赦さない”も、そんな事、始めからあり得ない。
私を切望して、守って、命懸けで償ってしまった人達だもの。
あなた達は、私の親であり、保護者だった。
怨んでも憎んでもいない。
だから、来世では、幸せに…
皆で、幸せになろうね。
匡は涙を溢しながら、微笑ってくれた。
「ありがとうね、ユリ…
あの人達が命懸けで守り抜いた、ユリの一番大切なものを貰うよ?」
識っている筈の温もり、識っている筈の感覚、声…
なのに、全てが新しく、輝いていた。
痛みすら愛おしくて、嬉しくて、涙が止まらない…
「ユリ、ユリ…ごめんね。痛い思いをさせて…
生涯をかけて、その綺麗な笑顔を護るよ」
優しく微笑み、囁きかけてくる匡の瞳にも涙があり、私達は泣きながら朝まで互いの温もりを求め合った。
ありがとう、私を生み出した人達…
ありがとう、お父さん…
私は、今、漸く負い目なく全身全霊をかけて匡だけを愛し、愛され、愛し合った証を産み出せる私自身を喜べています。
そして、心から笑って、手を取り合って、匡と、生きて行きます。
―終―
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