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仁志が当主として在位した後、匡君が企画する様々なイベントや施設により、子供達や若者達にとっての里の生活が、賑やかで楽しいものへと変わってきた。
そして、匡君が女装までして奮闘した一件も片付き、12月初旬…
「クリスマス会?」
「桜華が招待状を持って来ましたよ。
おそらくは兄さんの家にも来る事でしょうね」
比呂斗の家を訪問すると、色鮮やかなカードを見せてくれた。
「仁志は一緒に居なかったのか?」
「里中に招待状を配り歩くのに手分けしているらしくて、護衛に白桜が同行していました」
珍しいな。仁志が桜華と別行動をとるとは。
まして、他の者に任せるなど、初耳だ。
「白桜ならば、間違いはない」
比呂斗が確信して言った。
「確かに…っと…」
不意に携帯電話の着信音が鳴る。このメロディは桜華だ。
メロディを聞き、比呂斗が可笑しそうに笑いながら俺を見た。
「クク、桜華が入れたんですね?俺もですよ」
「…お前もか?全く、家の中では良いが、外で鳴った日には、こっ恥ずかしくてな。
いい歳をしたオヤジが鳴らすメロディじゃあないぞ?」
仁志が当主となって以来、桜華は本心のままに行動出来る様になり、年頃の女の子らしい様子になってきた。
それは、幼い頃からを知る者達にとっては、大変に嬉しい事である、が…年頃の女の子とは、こんなにもパワフルなのか、と圧倒すらされてしまう。
まあ、あの比呂弥の娘なのだから、そうかも知れない。
勘弁してくれ、と愚痴を溢し電話をとると、桜華の元気な声が聞こえてきた。
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