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「ご心配は要りません。私、今、何もかもが楽しいんです」
優凛華さんが心からの笑顔を見せてくれると、俺もつられて笑顔になった。
俺の唯一の女性は、この世に居ない。
これから先、嫁を貰うつもりはないし、子供を持つ気もない。
…優凛華さんの何気ない仕草や癖は、結に似ている。
もしも…結に女の子が居たら…
そう思い、優凛華さんを見てしまうから、今の俺の中での彼女は、娘同然の存在となっている。
「お父さんが何人も居て、嬉しい!」
そう笑顔で言うなり、優凛華さんが抱き付いてきた。
「おっと…」
こんな不意打ち、驚かない方がおかしい。
…どうするべきか?
「頭、撫でてあげて?私ね、抱っこされて頭を撫でて貰うの大好きなの」
飛鳥さんがニコニコ笑い、戸惑う俺に助言をくれた。
ここは素直に従うべきか?
「私も、頭を撫でて貰うの、大好きです」
躊躇う俺の心を読み、優凛華さんが口を開いた。
「そうかい?分かった」
頭を撫でると嬉しそうに微笑み、目を閉じている。
その様子は、確かに兎だ。可愛らしい。
可愛らしさに、ついついギュッと抱き締めてしまうと、背後から突き刺さる様な殺気を感じた。
「ひ~ろ~き、にぃ~さ~ん…」
「匡、どす黒いオーラを撒き散らして、どうした?」
振り返るなり声の主をからかってやると、冗談抜きにどす黒いオーラを纏い、匡君が俺を睨んでいた。
「四神とあろう人が白昼堂々と、天下の往来でなぁぁ~にをっ!
今度から“ロリ虎”って呼びますよっ」
「止せ止せ。お前、ネーミングセンス無いな」
話をはぐらかしつつ匡君をからかってやると、優凛華さんが不思議そうな顔をして可愛らしく首を傾げた。
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