序幕

2/4
33人が本棚に入れています
本棚に追加
/497ページ
これは、そう、徳川様が御治めであった世の事で御座います。 秀忠公が嫡男、生まれながらの将軍とも謳われし御方、第三代将軍徳川家光公の御時世。 幕府の体制が定まりましたこの時代に、ひとつの出逢いがあったのです。 片方は、籠姫と呼称された武家の娘。その兄は家光公の相談役として幕府に精通しておりました。 もう片方は、武家の子息として産まれながら、跡取りとなる事すらできない末の子。父は大変有能で、先代将軍の側に仕えた事もある程であるのに。 同じ武家の生まれではありますが、この御二人が出逢う事など、可能性は零に近かった事でしょう。 それであるのに運命が交わったのですから、恐らくこの出逢いには意味があるのだと思うのです。 光源氏があの日、あの場所で紫の上と出逢いました事と同じ様に、御二人の出逢いは何か見えないものによって導かれたものなのではないでしょうか。
/497ページ

最初のコメントを投稿しよう!