鳥籠

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他の男達は畳の上に倒れて意識を失っているし、刀を失った彼には為す術はない。 虎吉はそこで漸く目を開けて、刃を男の首筋に向けて当てた。 真っ直ぐな瞳に見つめられ、男は自身の身体が固まるのを感じた。 瞳に色がない。あるはずなのだが、見えないのだ。 言うなれば、透明。そこにあるのに見えないもの。 自身に恐怖を与えるのは紛れもなく、この瞳だ。 透明な闇を抱えた、この瞳。 それはとても綺麗であるのに、恐ろしくて仕方ない。 「…動くな。動けば首を跳ねる」 脅しではないという証明に、刃を首筋に少し食い込ませた。 そこに伝う赤は偽りではない。 思わず、男は息を呑んだ。
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