鳥籠

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動揺し、小さく肩が揺れた。 虎吉がそれを見逃す訳がなく、足を払って畳の上に転がした。 仰向けに倒れた男の上に跨がり、刀の先を喉元に向けた。 「動くなと言ったはずだ」 身動きすれば、このまま喉を掻き斬られる。 そして、彼は宣言通りに躊躇いなく行動に移るだろう。 その恐怖に囚われて、男は呼吸すら儘ならない状況だった。 怖いと、ただそれだけを。 まだ少年のあどけなさを残す者に対して抱く恐怖にしては大きすぎるものを。 蛇に睨まれた蛙と言うべきか。 蛇と呼んでしまえば、蛇が可愛く思える程ではあるが。 しかし、それ程までにこの少年の纏うものが恐ろしかった。
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