鳥籠

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対して虎吉の方は然程呼吸を乱していなくて、髪の毛先まで神経が通っているのではないかと思うくらいに微動すらしない。 桐は感心した様な声を漏らしたが、蘭は静かに眉を潜めた。 彼の目は他の倒れている男達に注がれていた。 「…斬らなかったのか」 「馬鹿な。斬ったではないか」 「斬っていないだろう。何故殺さない」 「尋問するのが先だ」 それは嘘だと蘭の唇が動いた。 彼は最初から相手を殺すつもりがなかったのだ。 殺気は微塵も感じなかったし、それに尋問するなら、一人だけ残して後の二人は殺してしまえば良かったのだから。 「…お前の狙いは姫様か」 「桐を人質にして私を脅すつもりなのだろう?全く…あの方々も御人が悪い」 虎吉の問いに答えたのは下にいる男ではなく、新たに現れた、仕立ての良い袴を着た青年だった。 彼は温もりを含んだ瞳を桐に向けて、無事だったか、と微笑んだ。
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