鳥籠

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桐は、兄上様、と呟いて、青年に対して微笑を返した。 青年の後から光則と平之助も現れて、部屋の状況を眺めると、光則は感心し、平之助は満足そうに唇の端を上げた。 青年は虎吉に目を向けると、静かな声で離してやれと言った。 虎吉も目だけで彼を見て、御意、と呟く様に答えてそこから退いた。 鞘に刀を収め、膝を付いて頭を下げた彼を一瞥した後、青年は起き上がろうとした男を見下ろした。 その目の鋭さに男は怯み、固まった。 青年は彼の顔を覗き込む様に腰を折ると、恐ろしくなるくらいに子供の様な柔らかい笑みを浮かべた。 「御主人に伝えてくれ。どうしても御厨を潰したいならば、この様な姑息な手段を使わず、正面から私を潰しに来いと。妹だけではない。うちの者に手出しなさる様であれば、此方も容赦なくそちらを潰しにかかると言っておけ」 此方には色々と手があるものでね。 低く囁いた言葉は刀よりも鋭く身を切り裂き、底知れぬ恐ろしさが滲み出ていた。 これが御厨家の当主、桐の兄であり、虎吉の正式な依頼者本人である。
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