鳥籠

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江戸幕府三代目将軍、徳川家光公は1623年、伏見城にて将軍宣下を受けた。 この方は良くも悪くも自由奔放で、お忍びの外出を好み、遠乗りの際には一人だけ馬で駆け出し、御供を置いて行く事もしばしばあったと言う。 その反面、政の才能があり、幕府の体制が整えられたのも彼の時代だ。 有能な家臣に恵まれた彼は後の世で鎖国と呼ばれるものを完成させ、外部からの干渉を避けた。 唯一交流を許されたのはオランダという、欧米の国だと言うのは実に有名な話である。 その様な彼でも対処できなかったのは、武家の対立。 目に見える対立ではない。見えない所にある両者の対立だ。 どの様に策を立てても、人の心の根本的な部分は人には見えない。見えないのだから、対処しようもない。 そこで生まれたのが、将軍の狗である御厨家。 特務執行機関と言えば聞こえはいいかも知れないが、その実は武家の間で起こる見えない争いを力で捩じ伏せる役割を担っている。 将軍が黒だと言ったものを容赦なく叩き潰し、そして、何事もなかったかの様にこの世界から消してしまう。 それが、御厨。
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