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目の前に座る青年は妹に向けたものとは全く違う、硬い表情をしていて、若いながらにも当主である威厳を漂わせていた。
見た目は10代半ばと言っても分からない程ではあるが。
彼の前で虎吉は相変わらず緊張していて、今晩だけでどれだけ身を硬くした事だろう。
それだけ、この屋敷の者達は纏う雰囲気が違うという事だ。
側にいるだけで相手を畏縮させる、そういう雰囲気だ。
青年は虎吉を真っ直ぐに見据え、それから漸く口を開いた。
「私は御厨三代目当主、御厨忠彦だ。新堂殿、まずは礼を言う。妹を守って頂き、感謝する」
そう言って、彼――――忠彦は頭を深く下げた。
そして、主人に倣って、側にいた光則と蘭も頭を下げた。
それを見て虎吉は慌てて、お顔をお上げ下さい、と言った。
自分は守れと言われたから守ったのだ。
それが依頼だったから、だからあの少女を守ろうとした。
それだけであるから、頭を下げられると此方が申し訳なくなるし、当主自ら頭を下げる姿は見たくない。
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