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顔を上げた忠彦は目元を和ませ、柔らかい表情を見せた。
彼には此方の表情の方が似合うと虎吉には感じられた。
「貴方は父君に良く似ている。まるで、生き写しの様だ」
「父を、御存知で…?」
「私が幼かった頃、良く剣技の稽古をして頂いた。同じ年頃の子がいると話しておられたが、貴方の事だろうかな、新堂虎吉殿」
そう言って柔らかく笑う。
その笑顔の中に先程の少女の面影は一切見えなかった。
兄妹であるのに、赤の他人だと言った方が納得できる程に、全く似ていない。
それでも彼らは兄妹だと言うのだから、それは偽りではないのだろう。
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